【あの日からの地続き】

昨夜、次女と並んで「可愛い親子やん」と笑いながら、セロハンテープで笹の葉に結びつけた七夕の短冊。あの静かで優しい星祭りの余韻は、明けてみれば一転、激しい大人の現実の怒号のなかへと引きずり込まれることになりました。

【日常の輪郭】

「クレームから始まる一日」――まさにその言葉通りの朝でした。 公共工事の現場に立つと、地元の年配の住民の方と、お役所の担当者との間で、意向が完全に食い違うトラブルが勃発していました。板挟みになる私たちの目の前で、役所の担当者は「下地が悪いままでいいから、とりあえずそのまま進めてくれ」と、その場しのぎの無責任な指示を出す。 私は胸の奥でふっと冷たい風を感じ、その指示を明確に却下しました。「ここで妥協したら、将来絶対に手戻りが起きてみんなが苦しむことになる」。自分の責任で下地からきっちりやり直す。経営者としての強い決断が、泥を被る覚応とともに固まりました。

怒り狂う住民のおじいさんを前にして、私は心の中で、かつて出会った「人の懐に入るのが天才的に上手い、あの懐かしい先輩」のペルソナをそっと自分に降ろしていました。まずは相手の言い分をトコトン褒めて、信頼の土台を築く。 「人と話す時はな、誰の顔を自分に降ろして喋ったら一番前に向くかを考えるんや」 その絶妙なコミュニケーションの演技が功を奏し、現場の混乱は見事に収まっていきました。

そんな激闘の合間、移動の車中では、新しく仕掛ける移動販売の作戦をさらに緻密に練り上げていました。 「冷たいかき氷はあえて小学生以下を無料にして、最高の客寄せパンダにするんや。集まった人たちに、本当に自信のあるホットドッグを買ってもらって利益を出す。水から作る氷なら原価も抑えられるし、これならいけるぞ」

けれど、そんな風に頭をフル回転させて突っ走る私の胸の奥に、夕方、ふと冷たい爪のような危機感が突き刺さりました。 カレンダーに並ぶ、八月、九月の過密なスケジュール。地域の夏祭り、母校の集まり、大切な演奏会の本番に、秋の大きなコンクール、そして移動販売の出店――。 「アカン、今のこの感覚は、準備不足で失敗する時のあの独特な肌感覚や……」 仕事でも趣味でも、何事もモノになるには最低でも「三年」はかかる。多くの人はその三年が我慢できずに途中で諦めてしまうけれど、私はいつだって三年を耐え抜き、その先の景色を見てきた。だからこそ、この自分の経験則が鳴らす警鐘を、無視するわけにはいかないなと、激しい気疲れのなかで深く内省していました。

他人の顔を降ろして器用に世渡りをし、危機感に身を縮こまらせている泥臭い男。けれど、誰のせいにもせず、自分の足元だけを信じてケツを持とうとしている、相変わらずせっかちで愛おしい男。その呟きは、忙しない現実の荒波のなかで、自分が自分であるための確かな錨でした。

【その瞬間のきらめき】

未来の私が人生の終盤にこのページをめくるとき、あの夏の現場のトラブルがどうなったかとか、かき氷の原価がいくらだったかなんて、きっと記憶の砂漠に埋もれているはずです。 覚えているのはきっと、他人の顔を降ろして必死におじいさんをなだめていた自分の滑稽さや、自分の名前を呟きながらハンドルを握りしめていた、あの手のひらの熱さだけ。「できない理由」を真っ先に探して逃げる退屈な生き方を拒み、何事も三年は這いつくばって形にしていくこと。たとえ失敗する肌感覚に襲われようとも、その恐怖すらも先回りの段取りに変えて突き進む、あの日の私のプロフェッショナルな体温が、未来のあなたを今も力強く励ましてくれています。

【明日へのあしあと】

一日の激闘を終え、夜の静寂のなかでお気に入りのグラスを傾けています。お世話になっている施設への請求書を鞄に入れ忘れてハタハタとしたり、使用済みの空き瓶を返却して次のまとまった仕入れを手配したりという、愛応のある日常のタスクをこなしながら。