【南国の風ともてなしの城】満腹の夜に響く、愛おしい仲間たちの笑い声
あの日からの地続き
予防の段取りを完璧に整え、極限まで荷物を削ったリュックを背負って我が家を出たのが、まるで遠い昔のことのようです。バキバキに壊れる前に心と体を労わろうと決めた私は、飛行機の遅延や激しい揺れという小さないたずらを通り抜け、懐かしい熱気に包まれた南の島へと降り立ちました。
日常の輪郭
南国特有の、肌にまとわりつくような温かい湿気。飛行機のオンラインチェックインの新しい仕組みに「これじゃあ小さな子ども連れは座席ガチャになってまうな」とハラハラ分析していた時間すら、無事に到着してしまえば愛おしい旅のプロローグです。
ホテルのチェックインを済ませ、仲間たちと賑やかに向かったのは、地元で愛される活気あふれるステーキハウスでした。 ジュージューと音を立てる分厚い肉の塊から立ち上る、濃厚な脂の匂い。ナイフを入れるたびにあふれる肉汁を口に放り込み、冷たい地ビールで流し込む時間は、まさに至福そのものでした。限界までお腹を満たし、思わず口からこぼれ出た本音。
「あかん、もう生きもしたくないくらいお腹いっぱいや……」
そんな贅沢な文句を言いながら、私たちは夜の風に吹かれて屋台村へと繰り出しました。 プチプチと弾ける海ぶどうに、独特のコクがある地元の発酵豆腐。箸をつつきながら、昼間に訪れた古い城跡の記憶がよみがえります。 現地のガイドさんが教えてくれた、その城の歴史が妙に心に残っていました。その城は、敵と戦うための砦ではなく、海外からの賓客を歌や踊りで温かくもてなし、文化と貿易の力で国を豊かにした「世界の架け橋」だったというのです。
「戦うためやなくて、友情を深めるための城か。粋なことをするなぁ」
そんな余韻に浸っていると、ポケットの中でスマートフォンが震えました。本業の現場からの、現実的な確認の電話。南国の喧騒の中で、私はただ苦笑いしながら、素直すぎる言葉を返していました。
「俺、今南の島におるんや。うん、現場のことはちょっとわからんよ、ごめん」
仲間たちがそれを見てゲラゲラと笑う。自分が楽をするためにスロープを作ったのに、結局あれこれ用事を押し付けられた昔の愚痴をこぼすと、また笑い声が夜風に溶けていきました。お酒の席の勢いで、「夜祭りで瓶を叩くと目の前で凍るコーラを出したら絶対売れる!」「ピカピカ光るカップでドリンクを出そう!」と、新しい移動販売のアイデアが次々と飛び出します。
思考の句読点として、いつものように自分の名前を小さく呟きながら、私はこの騒がしくも温かい夜の体温を、全身で受け止めていました。
その瞬間のきらめき
未来の私がこのページを開いたとき、きっとあのステーキの味や、屋台村の提灯の光を鮮明に思い出すことでしょう。 武力ではなく「もてなしの心」で繋がった古い城のように、私もまた、ビジネスや趣味のバンドを通じて、周りの人間とそんな関係を築いていきたいと願っていました。完璧な段取り通りにはいかない旅路だからこそ、想定外の揺れも、仲間との他愛のない会話も、すべてが人生の特別な隠し味になるのだという気づきが、胸の奥をじんわりと満たしていました。
明日へのあしあと
「明日は午前4時半に起きて、一人で街を散歩して、朝ラーメンでも食べに行こうか」 そんな無茶な野望を口にしながら、明日のロビー集合は午前8時半という約束を交わして、ホテルの柔らかいベッドに潜り込みました。
明日は恋人の島と呼ばれる美しい場所へ渡り、大自然の中を四輪バギーで駆け抜けるという、少年のようにワクワクする計画が待っています。来週の火曜日の午前中には、またシビアな仕事の打ち合わせが控えていますが、今夜だけは南国の波の音に耳を傾けながら、ただこの旅を楽しもうと思います。
明日も、きっといい日になりそうです。
それでは、また明日。
