【あの日からの地続き】

遠くの街へ旅立つ長女を車で送り届け、居酒屋で強炭酸のグラスを傾けながら「パパ大好き」のささやきに胸を熱くした、あの少し甘酸っぱく温かい余韻。娘の新しい第一歩を祈るように抱きしめて迎えた土曜日の朝は、静寂を切り裂く緊急連絡と、酷暑の現場を駆け抜ける猛烈なエネルギーとともに幕を開けました。

【日常の輪郭】

朝七時半、街の水道インフラを揺るがす数千世帯規模の突発的な断水トラブルが発生しました。 「配線の破断やない、センサーが水流の急変を感知して、遮断弁がバシャーンと落ちてしもたんやな」 原因を即座に見抜き、現場へ駆けつけて迅速に給水と復旧の段取りを整える。泥にまみれ、汗をぬぐいながら午前中のうちにトラブルを完璧に収めて見せました。移動の途中、ガソリンスタンドで目撃した「洗車機の後ろから車が田んぼへ突っ込んでいった」という映画のような事故の話を仲間に身振り手振りを交えて語り、場を和ませる余裕すらありました。

そして夕方、私はヘルメットを楽器ケースへと持ち替え、地元の夏祭りの特設ステージへと向かいました。 創立四十周年を超える愛すべき地元の楽団。可愛い子どもたちのダンスに合わせて、陽気なアニメソングやご当地のテーマ曲を響かせる時間。 ステージの上で、私は自分の音の深みに集中していました。 「音を大きくしようとして、トゲトゲしく荒い音を出すんじゃない。フォルテっていうのはな、この音の響きを空間いっぱいにそっと広げてあげることなんや」 音が溶け合い、観客の笑顔と手拍子が広がっていく景色。

その熱狂の合間、私は今月中旬に予定されている、遠くの被災地への災害復旧派遣に自ら手を挙げていました。 「たっぷりの水を積んだ給水車で現場を走り回りたい。自衛隊の皆さんと肩を並べて、困っている人たちの元へ直接水をお届けしたいんや」 誰かが嫌がる過酷な現場へ進んで飛び込み、直接「ありがとう」を受け取る生き方。それは、私という男の真ん中にずっと流れている、変わらない美学でした。

夜十時過ぎ、熱気を残したまま駆け込んだのは、街外れにある賑やかな中華料理店。 満席の店内で頼んだ熱々の唐揚げ定食や冷やし中華を囲み、仲間たちと大声で笑い合う反省会。 「ちょっと待て、俺の頼んだ春巻きと餃子をちゃっかり持っていくなよ!」とボヤいて見せたり、「見た目はおじさんやけど、体内年齢は若いのに心は永遠の小学生やな」と年下のメンバーを愛たっぷりにいじったり。年末の過密な出演依頼を冷徹に精査して「大事な本番だけに全力を注ぐぞ」と整理をつけながら、満腹の幸せに浸っていました。

思考の激しい波を乗り越えていくたび、私はいつものように自分自身のフルネームを、まるで散らかった感情をピシッと整える句読点のように、心の中で静かに唱えていました。

突発的なトラブルを即座に収め、被災地への派遣に胸を躍らせている、頼れる代表。けれど同時に、自分の春巻きを奪われてボヤき、ステージで音の響きにうっとりしている、ただの熱い男。 心の中で呟くマントラは、どれほど激しい一日であっても、自分が帰るべき温かい軸へといつでも引き戻してくれる、確かな確信のアンカーでした。

【その瞬間のきらめき】

未来の自分が人生の終盤にこのページをめくるとき、あの日どれほど急な断水対応に追われていたかとか、年末のイベントのスケジュール調整なんて、きっと小さな出来事として雲の彼方に消え去っているはずです。 覚えているのはきっと、夏祭りのステージで空いっぱいに広がったあの豊かな管楽の響きと、深夜の中華料理店で仲間と皿を突き合いながら腹から笑った、あの湯気の温もりだけです。自分の技術と体力を誰かのために役立てたいという情熱。フォルテの音のように、自分の人生の喜びを周囲へとどこまでも広げていくこと。完璧ではない泥臭い毎日だけど、仲間とともに本気で笑い、本気で音を鳴らすこの瞬間にこそ、生きていることの最高の煌めきが宿っているのだと、あの日の私が静かに教えてくれています。

【明日へのあしあと】

中華料理店の賑やかな余韻を胸に我が家へ戻り、静まり返ったリビングで明日のささやかな段取りを整えています。 明日は正午までにいつものホールへ入り、ステージ練習と譜面台の手配をカチッと済ませる重要な本番の準備が待っています。楽団の仲間がうっかり置き忘れた大切なスタンド類を明日無事に受け取るための連絡もメモに書き留めました。

響きを一つに重ね合わせ、最高の音を届ける明日は、きっといい日になりそうだ。

それでは、また明日。